訪問着とは?
着物マメ知識 2021.04.20
フォーマル用として、また観劇やお茶席・お呼ばれの席など、様々なシーンで着ることのできる便利な着物です。ミス・ミセスを問わずに着られます。日常着である「小紋(こもん)」のように小さな柄が全体に散らされているのではなく、絵柄が全体に一続きに入っているのが特徴です。
「訪問着」は柄が襟(胸元)から裾まで入っていて着物の中でも非常に色柄のバラエティが富んでいるのも特徴です。古典的な柄行の訪問着もあれば、パーティー用の個性的な柄もありますし、また紬の訪問着等も最近は人気を博しています。フォーマルから同窓会等のパーティー等、幅広いシーンで訪問着は着る機会があります。
「訪問着」という種類の着物は、和装の中では実は意外と新しい存在です。誕生したのは大正時代初期、ざっと100年程度の歴史になります。元々、日本では留袖等の正装用の着物か、小紋などの日常着の2つしかありませんでした。で言うと「ドレスかジーンズ」という二択だったわけですね。
ところが大正時代、日常着には洋装を選ぶ人が増え、その分着物の「お出かけ着」としての需要が高まります。「留袖ほどかしこまらず、お出かけ着にもなる着物が欲しい!」と言う声が増えたのです。
これに対応して、現在の三越デパート(当時は三越呉服店)が「訪問着」を打ち出しました。その名のとおり「人の家に訪問をする時に失礼ではない着物」という存在として、訪問着は生まれたのです。お呼ばれやお茶会、観劇などにも着られる着物と言う便利な存在は瞬く間に大人気となりました。昭和の中頃までは家紋を入れた訪問着が多く作られましたが、現在では家紋が省略されることが増えています。
結婚式にも着られることに変わりはなく、紋入りに比べて用途範囲が広いのが嬉しい点です。